#46 Zoomによる講義で通信量を減らすには

icon Toru Matsuzawa が 2020/04/16 12:34 に投稿 ( icon Toru Matsuzawa が 2020/04/19 9:06 に編集 <更新履歴> )

要旨

Zoomでの講義の際に,以下を行えば,平均通信速度を 100 kbps以下,90分の講義の総通信量を 100 MB 以下に抑えられそうです :smile: .

  1. 受講者には普段はカメラは停止,マイクもミュートするように指示する.
  2. 教員は普段はカメラは停止し,マイクとPPTの画面共有のみ用いる.
  3. もし,教員がカメラを使う場合には,受講者にZoomのウィンドウをなるべく小さくさせるか,サムネールのところに表示するように指示する.
  4. PPTについては,
    • 単純な背景を使い,
    • 可能ならば細かい線画や高解像度の画像は避け,
    • 「画面切り替え」の特殊な設定は「なし」にし
    • 動画は埋め込まず,アニメーションも最小限にする.

学生がスマホ回線の契約の上限に達して,128 kbpsの通信速度になったとしても,下記のやりかたなら,リアルタイムで受講できます :v: .

なお,音声(25 Hz サンプリング・モノラル)だけなら,90分で 50 MB 以下に抑えられると思います.


#34 Zoomによる録画の試行例 にzoomを使った場合の,動画ファイルサイズの目安が述べられています.

動画ファイルは25 fps(フレーム/秒)で収録されていますが,調べてみたところ,通信時の画面共有のフレームレートはもっと低いことがわかりました.したがって,実際の通信においては,もっと通信量は少ないはず,と思ってテストしてみました.

通信速度等の調べ方については,Zoomにサインインした後の画面の右上の歯車をクリックするか,zoomのWeb会議中の画面のマイクやカメラのアイコンの右側の「^」というところをクリックして,「オーディオ設定」または「ビデオ設定」を選んで,出てきたメニューから「統計情報」を選びます.詳しいやり方はZoom-Supportの ミーティング中の統計情報(アナリティクス) をご覧ください.

自宅でPCを3台と,zoomのアカウントを3つ用意してテストしてみました.その結果,以下がわかりました.

1)ビデオについては,受信する側がウィンドウを小さくすれば,受信量が減る

これについては, #17 学生向けZoomマニュアル の40枚目のスライドをご覧ください.

注:[ #17 学生向けZoomマニュアル] のテストでは非常に大きなビットレートが出ていますが,私のところ(150-200 Mbpsくらいの回線)で明示的にHD(1280x720)を指定しても,送られている動画は640x360の解像度のままでした.サーバー側で帯域を絞っているかもしれません.その理由としては,zoomが混んできたからか,私が無料アカウントで試したせいか,どちらかはわかりません.ただし仮にHDが可能となったとしても,HDの指定はしないほうが良いと思います.

カメラからのビデオ映像については,大画面で表示していると640x360 の解像度で最大32fpsのフレームレートで受信しますが,一番小さくすると320x180の解像度で最大16fps,サムネール表示(参加者一覧で上または右のほうにずらっと並んでいる表示)にすると160x90の解像度で最大16fps程度で受信するようです.小さくすれば劇的に通信量が減ります.

2)ビデオについては,受講者全員がウィンドウを小さくするか非表示とすれば,講師側の送信量も減る

非常に面白いことに,zoomは受信側が必要とする情報しか送信しないことがわかりました.受講者が全員,小さい画面にしていると,講師側からもそのような解像度・フレームレートでしかサーバーに送信されないようです.

また,受講者が誰もビデオを表示しないようにすると,講師側からはビデオ映像がサーバーに送られないこともわかりました.

注: このため,必ず誰かが受信していないと,通信速度のチェックができません. :anguished:

3)画面共有については,共有した画面の解像度のままで,フレームレートはデフォルトで最大10fps

画面共有については,たとえばフルHDのディスプレイでスライドショーを実施しているときには,解像度が1920x1080(フルHD)となります.フレームレートはデフォルトで最大10fpsとなっていました.

画面共有については,受講者側が表示を小さくしても解像度もフレームレートも通信量も変化しないようです.

なお,よくわからないのですが,たまにウィンドウを縮小しても,中の画像が小さくなってくれません.これは画面共有時のみの問題であり,ビデオについてはウィンドウにあわせて小さくなります.

原因がまだよくわかりませんが,途中で別のPPTに切り替えるとこの問題が生じやすいようです.元に戻す方法もまだわかりません.一度,Web講義を全部終了して,最初から全部やり直すと正常になります.

4)画面共有だけなら,概ね 100 kbps 以下の通信速度

高詳細な線画や動画,頻繁なアニメーションを使うと,通信速度が一瞬,最大 1 Mbps くらいになりますが,その頻度が高くなければ,音声を入れても平均で100 kpbs以下の通信速度になりそうです.

地震関係でよく使う図としては,高解像度の反射断面図のような細かい線が多数入っている図は,通信量が増えます.また,頻繁なアニメーションを使っていたり,画面切り替え時に「フェード」を使っていると,圧縮が効きにくくなり,通信量が増えます.

5)音声は通信時は24 kHzサンプリングで,通信速度は平均で 50 kbps 程度

録画ファイル内では,音声は32 kHzサンプリングとなっていますが,通信時は24 kHzサンプリングとなっていました.また,通信速度は平均で 50 kbps 程度で,切れ目なくしゃべり続けていると,最大 80 kbps 程度にはなるようです.

音声だけなら,通信量は半分くらいになります.逆に言えば,音声だけにしても,通信量は半分にしかならないということです.

6)まとめ

講義時には,受講者側はカメラもマイクもオフ,講師側もカメラはオフにし,PPTの画面共有のみとすれば,平均 100 kbps 程度の通信速度になり,90分の講義の総通信量も 70 MB 程度,最大でも100 MB以下に抑えられそうである.音声だけなら,35MB程度,最大でも50MB以下と考えられる.

スマホの定額契約の場合,ある上限を超えると,通信速度の上限が128 kbpsに設定されてしまう契約が多いと思います.上記のやり方で講義してもらえれば,仮に128 kbpsになってしまったとしても,学生はリアルタイムで受講できます.

どうしてもだめなら,配付資料のファイルをあらかじめダウンロードさせて,それを見ながら講義音声を聞くようにすれば,90分で50 MB以下になります.

ただ,音声だけの場合には,昔の旺文社のラジオ講座みたいに,何ページ目のどの図を見ているのか,ということを常に説明することが必要になります :sweat_smile: .

以上,ご参考になれば幸いです.

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